爆発させた。
「ふん、おおかたこんな事だろうと思ってた! うちにゃ米粒一つだってないのに、私だってこの子どもたちだって夕御飯も食べられないって始末だのに、よくもこんなにのびのびと酒を呑んだり花を引いたりしていられたもんだね……」
父も腹立たしそうに血相を変えて立ち上った。そして母を縁から突き落とし、自分も跣足《はだし》のまま飛び降りて母になぐりかかってきた。もし居合わせた男たちが父を後ろから抱き止めて、母をすかしなだめ、父を部屋に連れ戻してくれなかったなら、憐れな母は父にどんな目に合わされたかもしれなかった。
人々のおかげで母はなぐられなかった。その代り、米粒一つも鐚《びた》一文も与えられずに、私たちはその家をすごすごと立ち去らなければならなかった。
悲しい思いを胸におさめながら私たちは黙々と坂道を上っていた。
「おいちょっと待て」
父の声である。私たちは父が米代をもって来てくれたのだと思って急に明るい心になった。ところが実際はそうではなかった。何と残酷な、鬼みたような男で父はあったろう。
立ち止まって救いを待っている私たちに近寄ると、父は大きな声でどなりたてた。
「とくの、
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