歩はできそうにない。仕方がないから、絶壁をよじ登っては河ところで、二つの大きな滝となっている、上の滝は二百尺くらいもあろうと思われる。この滝の右側の尾根を下り滝の下を横切って下の滝の左側を下って河原に下りたが、本流原へ下り、また絶壁を登っては河原へ下りの運動を数十回もやった。こうしてやっと広河原に着いたのは午後五時頃で、大変予定が狂い実に残念だが、疲れ果ててしまったので、広河原の小屋へ泊ることにした。幸いにもちょうど私が小屋へ着くと同時に、とても物凄い夕立が襲った。このときの雷はゴロゴロと一分間くらいつづいて鳴り、なかなか凄かった、だいぶ雨が漏ったが小屋のお陰で、びしょ濡れにならぬだけは拾いものであった。
十二日、山は霧がかかっている。午前六時小屋を出発して予定の尾根をまっすぐに登って行き、二六〇〇メートル辺から山を巻いて赤石岳と荒川岳の鞍部へ出で大聖寺平へ下って行く。小屋は石室でちょっとわからぬが目印に小屋の右上の尾根へ柱が立ててある。なお下ると水がでている。聖岳往復中、余分の食糧を小屋に置いて出発し、赤石山蚕玉大神を祭った剣ヶ峰へ取付き、大きな東山稜を持った小赤石を乗越して海抜三
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