るところで小渋川を渡ってトロ道に入り、小渋川に沿った山間の景色を味いつつ午後三時頃大河原に着いた。丸川旅館というに休んでいると、あの五人の登山者がやってきた。それは早大山岳部の連中で、部奈からずっとトロ道ばかりをきたのである。そして赤石岳から白峯へ行くと言っていたが、高山越えをして荒川岳と東岳へ往復し、赤石岳へ行かず白峯へ行ったのだった。少し遅いが昼飯を食い、記念品を買って四時頃ここを出発し、小渋陽へ七時半頃着いて一浴し伸びてしまった。ここのおじいさんは耳が遠くせがれに先立たれたと淋しそうに語っていた。
十一日、今日もいいお天気だ。しかし小渋川はちょうど梅雨後で水量激増し徒歩ができぬ。そこで小渋陽から少し引返し高山越えをしなければならぬのだが、私は高山の中腹から広河原へ下る道があると聞いたのでそれを行くことにした。午前六時頃小渋陽を出発し、板屋谷を横切り高山の中腹を巻いて次の谷の土崩まできたが、この川を渡って向うの山へ取付く道がわからない。そこでこの川をまっすぐに下ることにした。後には道は土崩の上を通って向うの山から広河原へ下るのだと聞いた。この川は小渋本流に出合うはこんな上流でも徒
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