鞍馬橋を渡る。風景絶佳なり。橋の下百尺くらいのところに川あり、両岸絶壁をなし、他に求め得ざるものあり。崩越より急なる山道に入る、暑さのため鼻血を出し半時間くらい休み、峠を越し、少し迷いて歳児(サイチゴ)に出ず、この峠を越し小川という川に出で、それを下り上松に出、ここへ泊る。六時半。

[#地から1字上げ]二日(月曜日)晴
 上松の宿屋を六時発、道標を見て進む、非常によき道なり。鳥居をくぐりて少し登り徳原を過ぎ、河原に出で、なお進むと小屋あり、ここが三合目にして、これより急に上りとなる。登山者名簿に名前を書き急峻を攀ず。なかなか大森林なり、五合目小屋にて休み木曾須原への下山道を聞く。上松の御料林局にて聞きたるも同様道なしと言う。登ること数時間八合目の小屋着、昼食を食し焼印を押し絵葉書を買う。なお登り木曽駒頂上小屋着、焼印を押し絶頂へ、多くの祠あり、参拝御守を戴き、三角点にて、万歳三唱、眺望よからむに霧にかくれて何物も見えず、右へ主脈を進み中岳を経て、宮田小屋着、三時絵葉書焼印スタンプ等を押し前ヶ岳の三角点に行き万歳三唱し引返し宿泊せり。
[#地から1字上げ]三日(火曜日)晴
 今朝は痛快
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