晦日の雨でと思われる雪崩が左岸には出ている。
今年は積雪量が少ないためかあまり大きな雪崩は出ていないようだ。大半道は右岸を通っている。針ノ木の西尾根には岩場があるから雪のよく降る日は雪崩も多く出るだろう。
一八九二メートルの出合からちょっと上は谷が細く、両側から雪崩の出そうなところである。ここを過ぎると丈の低い山はんの木[#「山はんの木」に傍点]のはえた広い谷で、全く開放されたような気がする。しかし雪のよく降る日ならここから上が最も危険なところであろう。蓮華岳側はあまり問題にならいが、針ノ木側は岩場もあり、そのうえ風陰なのでよく出るに違いない。山はんの木[#「山はんの木」に傍点]が少なくなるとだんだん傾斜が急になり、谷もいくつかの小谷に分れる。霧が晴れてきて、針ノ木峠の小屋が見え出したので迷うこともなく、小屋の右側の小谷を急なキック・ターンを繰返しながら登ったが、意外に時間がかかった。
針ノ木峠の小屋には黒部側に面した南窓から入る。蒲団《ふとん》は梁《はり》に掛けてあり、その上にゴザを冠せてあった。食糧や燃料は無いようである。雪は南側の窓のある方には随分入っていた。
[#ここか
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