がひどく夏道通りしか登れないが、二、三月頃ならたいていどこでも通れる。称名川は足下はるかに音を立てて物凄く落ち込んでいるので、あまり端を通ることは危険である。この高原にたまった水は主に右手常願寺川へ流れているので、ちょうどこの端が広い尾根の分水嶺になっていて、ここを通ることはうるさい谷等を越したりすることもなく楽である。ブナの小屋から一時間もくるとシジミ坂というちょっとした登りがある。ちょうど地図の一二七〇メートル附近である。
なおも称名川を見下しながら同じようなブナ林の中を登って行く。シジミ坂よりまた一時間ほどもくると尾根も多少狭くなり、かつ、右にこの高原としては割合大きな谷が現われてくる。すなわちこの谷が桑谷で地図の一四一四・八メートルの三角点の手前にある深さ四〇メートルばかりの谷である。この谷は上で二つに分れ、左の方は短く、かつ、谷は称名川の方へも落ちているので、ここで迷ったら右へ右へと取って、決してこの左の谷へ入ってはならない。
またここは尾根が細くなる手前でトラバースしないと藪がひどく、尾根も大変複雑になっていて厄介である。桑谷へ下りたら谷をあまり登らず、なるたけ早く右手
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