かるなら単独行をやめよ。何故なら君はすでに単独行を横目で見るようになっているから。悪いと思いながら実行しているとすれば犯罪であり、良心の呵責を受けるだろうし、山も単独行も酒や煙草になっているから。良いと思ってやってこそ危険もなく、心配もなくますます進歩があるのだ。弱い者は虐待され、ほろぼされて行くであろう。強い者はますます強くなり、ますます栄えるであろう。
 単独行者よ強くなれ!
[#地から1字上げ](一九三四・一二)
[#改ページ]

穂高にて

    A 北穂高南本尾根(昭和八・三・一五)

 ここは北穂高と涸沢岳の鞍部に近い北穂高よりの尾根の上で、一間ほどの壁が飛騨側からの風を防いでいるが、信州側は涸沢谷へ向って相当急傾斜に落ちているので、露営地としてはあまりよくないが仕方ない。
 それは今朝槍の肩を出て日のあるうちに穂高の小屋まで行く予定であったが、早朝すでに天候悪化の兆が見えていたので出足が鈍ったのと、大キレットの下りを間違えて飛騨側の急な谷へ迷いこんだり、北穂の頂きに近い堅い雪と岩と斜面では安全第一とルックザックを下してこれとアンザイレンしたため、ルックザックが途中の岩に
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