いない。けれど闘志を強くするためか、あるいは逃避のための山行なら案内がいろうはずがない。そのうえ案内人もろとも遭難する場合を考えると、気の弱い僕にはとてもやとう気がしないんだ。
 それから皆と一緒に、宝永山の北側の浅い谷を登って行った。雪は風に少し作用を受けた粉雪で、ラッセルも無く非常に楽だった。皆は五合目の観測所の小屋に泊るので、僕はそこをスキー・デポとしてアイゼンを履き、中食ののち、宝永山の尾根へトラヴァースした。この附近はまだ雪がやわらかくだいぶもぐるところがあった。しかし尾根へ出てからはアイゼンで気持のよい堅雪だった。七合目附近から暗くなりだしので、安全第一と、この尾根を離れて左へちょっと巻き、宝永山の火口の真上の夏道のついている谷へ入った。この谷は風が当らないためか雪が非常にやわらかく、ひどくもぐってとても困った。そのうえ空腹を感じても食事をする余裕が出ないので、あえぎあえぎ登ったため非常に時間がかかった。あまり苦しいので右へ巻いて元の尾根の上へ出た。この尾根は雪が理想的に締っていてとても楽だった。帰りにもこれを下ってみたが、悪場など一カ所もなく平凡な尾根で、夏道の谷へ入らず
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