だった。あまり苦しいので、歩いて下った方が楽に違いないと思って、スキーをぬぎ、それを一つずつ谷へ向って辷りおろした。両方ともあまり遠くないところで止った。それから歩いて下るつもりだったのに、スキーをぬぐと何だか急に休みたくなり、ルックザックをおろして、それに腰をかけてしまった。
 その頃はもう風も凪《な》いでただ霧がかかっているだけだった。そうしているうちに疲れが出てきて、立ち上ることを全く忘れてしまった。そして僕は、もう駄目だ、ついに自分にも終りがきたのだとこう思い出した。そして死ぬということが非常に恐ろしくなり、悲しみの声をあげて泣いた。やがて、このスキー行がすんだら会えるだろうと思っていた故郷の父や、親しい友達のことがぼんやり頭に浮んできた。また会社の方が欠勤になることを昨日から悩んでいて、上の人にどう弁明しようかとか、山から下りたらすぐ電報を打って届を出してもらおう等と考えていたが、死んでしまえばその心配もいらなくなったと、ある気安さを感じた。その他金銭貸借上のこと等が次から次へと浮んできた。しかし僕は死んだのち多くの人に、僕が無謀な山行をしていた当然のむくいを受けたのだと、種
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