なかった。それで僕はまださっきの雪の孔の中で眠っているか、もしくはその前に雪庇から落ちたようだが、あのまま倒れていて、今夢を見ているのではなかろうかとこう思って、声を限りにどなってみた。しかしその声はかすかに聞えるだけで、その夢を破ることはできなかった。
やがて二十二日の朝がやってきた。その頃はもう雪は止んでいたが、濃霧は相変らず風にあおられていた。そして三ッヶ谷の頂上に近くなった頃は僕も極度に疲労してきて、後二〇メートルほどがどうしても登れない。僕はいくら夢を見ていても、登れるという自信があったら必ず頂上に登った夢になるだろうと、こう思って努力してみたが駄目である。ついに頂上へ登ることを諦めてしまい、横を巻いて北へ進んで行き、ようやく一つ北の尾根へたどりついた。けれどもこれを頂上へ登ることも大変だし、これから先にも相当に登りがあることだから、もう国境尾根縦走を止めて小代村へ下ってしまおうと、こう思ってついに決心をひるがえしてしまった。
やがて滑降が始まった。しかしスキーは下手だし、半分眠っているような状態でどうして満足な滑降ができよう。ちょっと辷ってすぐ自分から身体を投げ出すよう
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