っていようものなら仕事などまるで手につかないことがある。
 夜行列車が木曾福島のあたりを通るころには、山へ入って行く興奮からよく目が覚める。そして天候を気にしながらいつも窓外をすかして見るのであった。こうした何年かの経験によって木曽福島附近が晴れておれば翌日は晴天で、曇っていれば曇り、雪が降っておれば雪であることを知った。これによって見ると天候の変化が殆んどすべて南の方からやってくるのだと想像される。
 冬期常念山脈の主峰に登るには、常念一ノ沢より他に適当なコースは見つからない。鳥川橋を渡って二町ほど北へ進み、そこを左へ折れてまた西へ西へと離山の横を登って行くと鳥川橋から一時間あまりで大助小屋という一軒屋の前庭に出てくる。この道は最近改修されて大変よい道になっている。大助小屋には春から秋にかけては番人がいるようだが、冬には誰もいない。旧道はこの谷を渡ってちょっとした峠を越し崩れたところを高廻りしたが、今はその下を巻いて立派な道ができた上、崩れたところには大きな橋が架っている。なおもこの道を巻いて行くと、方向がぐっと北向きになり、冷沢《つべたざわ》という浅川山の西側から南へ落ちている。谷
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