出発した。そのうち霧が晴れて月が出たので、すばらしい冬の夜の山を味うことができた。風は相変らず強く、立止っていることが多かった。皮の手袋がぬれたので、毛メリヤスの手袋にかえたが、終始指の感覚がなくなるので弱った。やはり風の強いときは、皮の物でないと駄目だ。三ッ岳の三角標石も完全に露出していた。頂上からちょっと行くと左の尾根へ雪庇がつづいているので、それを伝って降った。その尾根は下の方で本尾根と一緒になっているように見えたが、下ってみると大きな谷になっていた。それでも烏帽子の小屋はもうすぐだと思って、元気で引返した。一番さがったところでスキーをはく。樅の林を右に見て、ちょっとしたところを越すとすぐ向うに、烏帽子の小屋が大きく月に照らされていた。小屋は意外にも、風のため土台まで露出していた。窓を開けて中へ入る。小屋の中にも雪は殆んどなかった。蒲団は三俣蓮華の小屋と同様、棒にかけてある。この小屋は風の強いときは寒いに違いないが、寝具があるので大したことはないと思った。
 七日はすばらしい快晴で、少々暑かった。小屋の附近はスキーに最もよいところだった。ブナ立尾根も上の方は素敵だった。尾根がやせ
前へ 次へ
全233ページ中137ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 文太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング