どうでしょう登りませんかと言って誘ってみたんです。すると兵治君は、登れるなら君、登って見給えと言いました。そうだ、ほんとに僕はずうずうしい考えをもっていた。一人できながら、他人の人等の助力によって山に登ろう等と考えたことはほんとに悪かった。一人で山に登るのもいい。だが、他のパーティの邪魔になったり、小屋の後片付けについて非難を受けたりするようでは、山に登る資格はない。またこれらのことが全部避け得られても、なお山麓の村人に心配をかけることのみはどうしても、避け得られないだろう。僕は劔にできるだけ近くまで行ってみたいと思ったので早月の方の写真をとってくると言って出かけました。そのとき、あの人等は御飯をたべませんか、お菓子はどうですかと言って下さいました。例の別山尾根の鞍部にスキーを置いて、軍隊劔に登りました。雪は少なくて柔かでしたから、偃松を掘り出して足場を作りました。平蔵の手前に、早月側は急な雪もついていないガラ場で、平蔵側は柔かい雪が非常に急に谷に落ちているちょっと悪いところがあります。ここで僕は前進ができなくなり、ようやく引返しました。あの人等は例の鞍部でスキーの練習をされていました
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