されていました。スキーはどなたも上手でした。土屋氏が松平氏に何々温泉のときよりうんとうまくなったねと言われるのや、東京に帰ったらこれを映写するとき、コンパをやろうじゃないか等の会話が聞えました。それからその谷を北へ渡り尾根に登ってそれを伝い少し東へ行ったところで急に兵治君がやーあそこに兎が寝ているぞと言って小さい谷の中腹を指さしました。見ると、一本の木の根元に雪孔があってそこに兎がいたのです。そこで兵治君が辷って追いかけながら杖を投げたが、当らず、向いの尾根に逃げてしまいました。それを土屋氏が撮影され谷を弘法の方へ渡って、小屋の北側の急斜面で、またみんな熱心にスキーの練習をされました。午後になって霧が晴れ、快晴になったので写真機をとりに小屋に帰ると福松君がこんなときにたくさん写しておきなさい、なにしろ冬の立山だから悪くなったらいつ晴れるか知れないし、いい記念になるんだからと言いました。それで田部氏も土屋氏も大きなカメラを持って出かけられました。僕は水野氏から、同志社の児島氏が正月劔に登られると聞いていたので、今日あたりこられるかも知れぬと思って、桑谷の上まで行ってみました。そして何度か
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