れが当っていた。常念の肩には大きな雪庇ができるように聞いていたが、もう落ちてしまったのか、問題にするほどのものはなかった。常念の小屋が出ているから、一人では不安だが、窓の位置さえ知っていればちょっと掘るだけで入れるだろう。中山峠の一ノ俣側は小さい谷でちょっとわからないが、地図の見当で当っていた。新雪期は悪い谷らしいが、雪が堅く、登りも思ったよりわずかなので何でもなかった。しかし二ノ俣側は思ったより谷が大きくスキーにはよさそうだ。二ノ俣の本流との出合の辺はスノウ・ブリッジがあって何でもなかったが、下の方は川が予想外に大きく流れているので悪いところをしばしば横へつりさせられて弱った。二月頃は川が埋るかも知れないが、もし埋らないならこの頃より一層悪いだろう。また赤沢岳からは底雪崩の凄い奴がたくさん出ているから、雪崩の方もなかなか油断のならないところだ。また中山峠を越さずに一ノ俣を下るとしても、滝のところで凄い横へつりをさせられ二ノ俣より危険かも知れない。五月に通ったときは柏矢町から一日で一ノ俣の小屋まで楽に行ったが、冬から春の間はちょっと困難だろう。
 いずれにしても新雪期はなかなか時間が長
前へ 次へ
全233ページ中101ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 文太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング