それが窓なんですよ。だからロクロの挽き方が下手で、土瓶が正しい形をしてゐないと窓がいびつになつたり楕圓になつてしまひますからね。だから、むづかしいのですよ。土瓶のやうな安物を正しくこしらへて、いゝ窓繪をのこした昔の人の腕はゑらいですね。」
窓繪、窓繪――
十錢か二十錢の土瓶にも名器を造る腕の冴えを必要とする。土紙[#「土紙」は「土瓶」の誤記か]にも見どころがある、味ひは無限だ、正しい土瓶の形、あの胴のふくらみ、双の耳がしつかりしてゐるか、口がよくついてゐるか、口の形がいゝか、口から湯が漏るやうなことはないか、土瓶の葢《ふた》の形、つまみの形――さうして、大いにさうして、耳に蔓《つる》をつけて、完成した土瓶の形は安定してゐるか。
日に干されて、火に燒かれて而して此の安全[#「安全」は「完全」の誤記か]をのぞまるゝ土瓶である。
金――錢を謂ふ勿れ。
[#改頁]
燒物一夕話
區別
科學的の分け方もありますが、私どもは簡單に土燒、燒しめ、石燒位の言葉で現はしてゐる。燒しめには※[#「※」は「火へん+石」、第4水準2−79−64、78−4]器などいふ字を使ふ物しりもある。
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