てきた
はつきり、しやつきり、羽づくろひ
型は押型、あらいとし
水を含んで飛んできた

瀬戸のをしどり ノウヱ
嘴が可愛や水滴の
水のこぼるゝさはやかさ
土は灰色黄ぐすりの……
昔、昔、大むかし
鴛鴦《おし》が生れた頃はいな

瀬戸のをしどり ノウヱ
藤四郎どんの顏わいな
酒をのうだか、餅ずきか
藤四郎々々々いふけれど
影も姿も見えわかず
お前の嘴動かずに
水をとく/\吐くばかり

瀬戸のをしどり ノウヱ
來た/\來た/\飛んで來た
思ひ羽つがへて又一羽
今ぢや揃ふて二羽となり
机の上の朝夕に
いとし、なつかし、つがひ鳥
かたみ代りに嘴《くちばし》の
硯にこぼす愛の水
墨のかほりもかぐはしや

鴛鴦の腹みりや ノウヱ
轆轤の痕が渦を卷く
糸切冴えて卷き渦の
古き夢追ふくる/\と
愛の泉の渦まいて――
いとし、なつかし、鴛鴦《おし》二つ
硯の海の片ほとり
日南《ひなた》ぼつこで居るわいな
[#改頁]

   窓繪の土瓶

 ※[#「※」は「「栃」でつくりの中の「万」のかわりに「朽」のつくりをあてる」、75−2]木縣の益子へ四五度いつた。その時窓繪を描くお婆さんと知合ひになつたところが御馴
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