。しかし其の器物の生れた時代を知ることが出來たならば、其の感興は更に深められやうし、鑑賞點は更に高められるであらう。殊に其の時代の相《すがた》をはつきり知つてゐたならば、其の器物に對しての鑑賞が、一段とはつきりしてきて、其の時代と共に呼吸することが出來る。
漆工藝が盛んであつた奈良朝から平安期、鎌倉期に入つて漸く起つた燒物が一時暗黒時代ともいふべき或る期間を過ぎてから足利末期より織豐時代、徳川初期と茶道の興るに伴れての發展、殊に況んや朝鮮征伐は「やきもの戰爭」といはれたほどの影響を日本に與へた其後の窯業。――徳川末期以後茶道の墮落に伴ふ燒物の墮落、模傚、似而非風流的技巧、等々。明治維新以來の洋風崇拜と輸出向品の媚態。――斯く觀じ來ると、説くことの餘りに多いのに當惑してしまふ。そこで、史上の概念を得るために「年表」[#「年表」省略]を作つて附録とし、こゝに説くことを省く。
たゞこゝで云ひたいことは時代を知らなければならぬ、燒物は偶然形が出來て、漫然生れたものではない。必らず時代といふものから生れてゐるといふことを知つてもらひたい。
【足利期の茶道】
足利期、禪家の僧が茶道に親しむ頃
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