縁があつたのだ。
 名物といふものは成程いゝ作であらう、然し同じ窯で造られた全部が惡かつたわけでもあるまい。その一つが運よく大權力者の手に入り、戰國時代勳功に賞でゝ分ち與へる土地が足りなくなつたので、折柄新興の茶道に陶醉してゐる勇將達に勳章の代りとして茶入を渡した。即ち一國一城に代はつた茶入である、その茶入が主人が滅びると又外の人へ、その主人が死すると又次の主人へと傳來する間に、悲劇、武勇、風雅、いろ/\の※[#「※」は「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28、32−6]話を生んで、それに關する文書が共に傳はり今日も猶千萬金の價をもたせてある。たゞ裸一貫になれば或は兄弟の名乘りが出來る茶入や茶わんが、貧寒われらのところへある一方、二重三重の箱の中に、二種五種の金襴の着物をつけて納まつてゐるのもあるわけだ。
 なあに、あんなに金を持つて威張つてゐるが、生れたのは、俺達と同じ芋小屋の中だつたんだ――と人がいふのと同じことも、或は燒物だつて言ひたいのかもしれない。だが、この傳世傳來といふことの感情的美くしさに就てはこゝでは云はない。それは又それで、今日發掘される破片の
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