つてくる。初めは黄色でなく、自然にほのかなる黄色を呈するのを發見して、そのほのかなる黄色を追うて黄色を強調していつたのではないかと思はれる黄瀬戸――それが後代の、また現代のあの黄瀬戸になるまでの釉の變遷は又一種の時代史である。時代が喜ぶからこそ其の裝飾法も永くつゞく。が、然し原始時代の故意に飾らざる美くしさが滅びて、如何にも黄瀬戸がらんとする黄色が横行するやうになつた。また、媒溶劑にしても、昔は如何なる木の灰を用ひたか、その木は今日あるかないか、あつても容易に得られないのか、兎に角「どんなに鯱鉾立をしても古い黄色は出ません」と工人がいつてゐる今日である。灰分の媒溶劑を使つてゐることは分つてゐるが今日の科學を以てしても出來ないところにやきものゝ面白味があるのである。
【ロクロ】
ロクロを廻すのに、今日のロクロは餘りに器械的に鮮やかに廻るために、昔のやうな、おほらかな物が出來ない。「ガタ/\するロクロでも探して來ないと、あんなのんきなロクロはひけない」と今の工人はいふ。ガタ/\したロクロで充分間にあつた「時代」といふものを矢張考へないではゐられない。
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古さ
【傳統】
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