た刷毛目の裝飾法だとか、象嵌して裝飾する雲鶴手とか、是等の技巧を併せて用ひた裝飾とか、各種の裝飾法が發達したのではあるまいかと云はれてゐる。日本における燒物とても同樣で、欠陷を補ふために一種の裝飾技法が發達した場合がある。
【伯庵の茶わん】
 かういふ事は例になるかどうか分らないが、やかましい伯庵の茶わんの如き、瀬戸で生れたものであらうが、あの茶わんは誰が見ても上手《じやうて》なものといふより、一種の雜器といつた方が當るかもしれない。伯庵茶わんの見どころが幾個所あるなどいふが其の一つに銅か鐵が發色したと思はるゝ海鼠《なまこ》の雪崩《なだれ》がある。これは赤や藍や白など、一種の面白い發色をしてゐる、そのくすりのなだれは茶わんの胴にはいつてゐる一本の紐から出てゐる。この紐といふのはロクロを※[#「※」は「えんにょう+囘」、第4水準2−12−11、25−7]す時に小砂利か何かゞあつて茶わんの表へ疵がついて線を引いたのかもしれない。そこで、この銅か鐵の發色であるが偶然こゝに發色する成分があつたのか、或は意識的につけたのか、それはわからない。しかし、或はそこに欠陷があつて疵を塗り潰すために有合せ
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