胎土《きぢ》がもつ或る成分と一緒になつて運動を起し、思ひもかけぬ色の釉となることもあれば、火度の不足を狙つて、そこに「志野」といふ清淨な器物を生み出す逆手もある。
同じ銅成分の釉が青くも赤くもなり、鐵、マンガン、長石、等々、いろ/\の鑛質がいろ/\の條件と機會に依つて變化の妙を極める。こゝに釉の面白味があつて、一色の釉でも、火の當るところと當らぬところに二樣三樣の變化を見せたり、さま/″\な景色を造つたりしてゐる。
昔の茶人は、この釉の變化を賞美して、風雅な銘をつけて愛賞してゐる。釉の千變萬化は、やきものゝもつ大切な美しさである。
【文樣】
やきものは釉ばかりでなく文樣に依つて裝飾されてゐる。その文樣は釉をかける前に櫛目、象嵌などいつて、櫛樣のものや釘や箆などで文樣をつけ、其儘にして釉をかけたのもあれば、又雲鶴手など彫つたところに白土を象嵌してから釉をかけたのもある。又|繪付《ゑつけ》といつて鐵やコバルト(呉須)などで器に文樣を描き其上から釉をかけたのもある。繪高麗、染付(青華)、辰砂などいつてゐるものがそれで樂燒に類する軟陶では更にいろ/\の色彩を玻瑠釉の下に描いてゐる。
【下
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