こか気風の暴《あら》ッぽい者ですから、お仙ちゃんのようなおとなしい娘には、もう少しどうかいう人の方がとそうも思うんですよ」
 ところへ、娘は帰って来た。あたりはいつか薄暗くなって、もう晩の支度にも取りかかる時刻であるから、お光はお仙の帰ったのを機《しお》に暇《いとま》を告げたのである。時分時《じぶんどき》ではあり、何もないけれど、お光さんの好きな鰻《うなぎ》でもそう言うからと、親子してしきりに留めたが、俥は待たせてあるし、家の病人も気にかかるというので、お光は強《た》って辞し帰ったのであった。
 中洲《なかず》を出た時には、外はまだ明るく、町には豆腐屋の喇叭《らっぱ》、油屋の声、点燈夫の姿が忙しそうに見えたが、俥が永代橋を渡るころには、もう両岸の電気燈も鮮《あざ》やかに輝いて、船にもチラチラ火が見えたのである。清住町へ着いたのはちょうど五時で、家の者はいずれも夕飯を済まして茶を飲んでいるところであった。
「婆やさん、私が出てから親方はどんなだったね?」
「別に変った御様子も見えませんでございますよ。ウトウト睡《ねむ》ってばかりおいでなさいましてね、時々|床瘡《とこずれ》が痛いと言っちゃ
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