らないというものじゃなし、お竈《へッつい》を据えて、長火鉢を置いて、一軒のお住居をなさるにむつかしいことも何もないと思いますがね」
「それに何《なん》なんでしょう、今はまだ少し星が悪いんでしょう。そんなことも言ってましたよ」
「じゃ、話だけでも決めておいていただいたら……」
「え、それは私も言ったんですがね、向うの言うのじゃ、決めておくのはいいが、お互いにまたどういう思いも寄らない故障が起らないとも限らないから、まあもう少しとにかく待ってくれって、そう言うものですからね」
「お光さん」と媼さんは改まって言った、「どうかね、遠慮なしに本当のことを言っておくんなましよね。ほかのこととは違って、御縁のないものならしかたがないのでございますから、向う様がお断りなさいましたからって、私はそれをどうこう決して思やしませんから」
「あれ、阿母さん、私ゃ本当《ほんと》のことを言ってるんですよ、全く向うの人はそう言ってるんですよ」
「つまりそれじゃ、体《てい》よくそう言ってお断りなさいましたんでしょう?」
「そんなことがあるもんですか」と言ったが、媼さんの顔を見るといかにも気の毒そうで、しばらく考えてか
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