た》夕方か、それとも明後日《あさって》のお午過ぎには私が向うへ行きますからね、何とか返事を聞いて、帰りにお宅へ廻りましょう」

     四

 金之助の泊っているのは霊岸島の下田屋という船宿で。しかしこの船宿は、かの待合同様な遊船宿のそれではない、清国《しんこく》の津々浦々から上《のぼ》って来る和船帆前船の品川前から大川口へ碇泊《ていはく》して船頭|船子《ふなこ》をお客にしている船乗りの旅宿で、座敷の真中に赤毛布《あかげっと》を敷いて、欅《けやき》の岩畳《がんじょう》な角火鉢を間に、金之助と相向って坐《すわ》っているのはお光である。今日は洗い髪の櫛巻《くしまき》で、節米《ふしよね》の鼠縞《ねずみじま》の着物に、唐繻子《とうじゅす》と更紗縮緬《さらさちりめん》の昼夜帯、羽織が藍納戸《あいなんど》の薩摩筋のお召《めし》という飾《めか》し込みで、宿の女中が菎蒻島《こんにゃくじま》あたりと見たのも無理ではない。
「馬鹿に今日は美しいんだね」と金之助はジロジロ女の身装《みなり》を見やりながら、「それに、俥《くるま》なぞ待たしといて、どこぞへこれから廻ろうてえのかね?」
「はあ、少しほかへも……
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