て座敷へ通りながら、「昨日あの、ちょいと端書を上げておきましたが……」
「あれがね、阿母さん、遅れてつい今し方着いたんですよ」
「まあ、そうですかよ。やっぱり字の書きようが拙《まず》いので、読めにくくってそれで遅れたんでございましょうね。それじゃお光さんにも読みづらかったでしょう、昔者の私が書いたのですからねえ」
「いいえ、そんなことはありませんよ。私にはよく分りましたけど、全くそういうわけで御返事を上げなかったんですから……さあどうぞお敷き下さい」
お光は蓐《しとね》火鉢と気を利かして、茶に菓子に愛相よくもてなしながら、こないだ上った時にはいろいろ御馳走になったお礼や、その後一度伺おう伺おうと思いながら、手前にかまけてつい御無沙汰をしているお詫《わ》びなど述べ終るのを待って、媼さんは洋銀の細口の煙管《きせる》をポンと払《はた》き、煙をフッと通して、気忙しそうに膝を進める。
「実はね、お光さん、今日わざわざお邪魔に上りましたのもね、やっぱりその、こないだおいで下さいましたあの話でございますがね。どうでしょう、私はもとよりのこと、お仙もぜひお世話が願いたいとそう申しているのですが……向
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