端書を膝《ひざ》の上に置いて、お光はまたそれにいつまでも見入った。
「全くもうむずかしいんだとしたら……」としばらくしてから口に出して言ったが、妙に目を光らせてあたりを見廻し、膝の上の端書を手早く四つに折って帯の間へ蔵うと、火鉢に凭《もた》れて火をせせり出す。
 長火鉢の猫板《ねこいた》に片肱《かたひじ》突いて、美しい額際《ひたいぎわ》を抑えながら、片手の火箸《ひばし》で炭を突《つ》ッ衝《つ》いたり、灰を平《なら》したりしていたが、やがてその手も動かずなる。目は瞬《しばたた》きもやんだように、ひたと両の瞳を据えたまま、炭火のだんだん灰になるのを見つめているうちに、顔は火鉢の活気に熱《ほて》ってか、ポッと赤味を潮《さ》して涙も乾《かわ》く。
「いよいよむずかしいんだとしたら、私……」とまた同じ言を呟《つぶや》いた。帯の間から前《さき》の端書を取り出して、もう一度読んで見たが、今度は二つに引き裂いて捨てたのである。
「お上さん、三公はどッかへ出ましたか?」と店から声をかけられて、お光は始めて気がつくと、若衆の為さんが用足しから帰ったので、中仕切の千本|格子《ごうし》の間からこちらを覗《
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