て、親方の傍についておいでな」
「へい、ただついてりゃいいんですか?」
「そんなこと聞かなくたって……親方がさすってくれと言ったらさすって上げるんじゃないか」
「へい。ですが、こないだ腫《むく》んでた皮を赤剥けにして、親方に譴《しか》られましたもの……」と渋くったが、見ると、お上さんは目を真赤に泣き腫《は》らしているので、小僧は何と思ったか、ひどく済まないような顔をしてコソコソと二階へ上って行く。
「医者のあの口振りじゃ、九分九厘むつかしそうなんだが……全くそんなんだろうか」と情なさそうに独言《ひとりご》ちて、お光は目を拭った。
 ところへ、「郵便!」と言う声が店に聞えて立ったが、自分の泣き顔に気がついて出るのはためらった。
「吉田さん、郵便!」
「はい」
「ここへ置きますよ」
 配達夫の立ち去った後で、お光はようやく店に出て、框際《かまちぎわ》の端書を拾って茶の間へ帰ったが、見ると自分の名宛で、差出人はかのお仙ちゃんなるその娘《こ》の母親。文言《もんごん》は例のお話の縁談について、明日ちょっとお伺いしたいが、お差支えはないかとの問合せで、配達が遅れたものと見え、日附は昨日の出である。
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