ものだから、しまいにはいろいろ自分の方から問いを出して考えていたっけ。あの通り縹致《きりょう》はいいし、それに読み書きが好きで、しょっちゅう新聞や小説本ばかり覗《のぞ》いてるような風だから、幾らか気位が高くなってるんでしょう」
「だってお前、気位が高いから船乗りが厭《いや》だてえのは間違ってる。そりゃ三文渡しの船頭も船乗りなりゃ川蒸気の石炭|焚《た》きも船乗りだが、そのかわりまた汽船の船長だって軍艦の士官だってやっぱり船乗りじゃねえか。金さんの話で見りゃなかなか大したものだ、いわば世界中の海を跨《また》にかけた男らしい為事《しごと》で、端《はした》月給を取って上役にピョコピョコ頭を下げてるような勤人よりか、どのくらい亭主に持って肩身が広いか知れやしねえ」
「本当にね、私もそう思うのさ。第一気楽じゃないか、亭主は一年の半分上から留守で、高々三月か四月しか陸《おか》にいないんだから、後は寝て暮らそうとどうしょうと気儘《きまま》なもので……それに、貰《もら》う方でなるべく年寄りのある方がいいという注文なんだから、こんないい口がほかにあるものかね。お仙ちゃんが片づけば、どうしたってあの阿母さん
前へ
次へ
全65ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 風葉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング