んだよ」
「俺の喋ってたことを聞いたかしら?」
「聞いたかも知れんよ」
「ちょ! どうなるものか」と言いさまザブリと盤台へ水を打《ぶ》っ注《か》けて、「こう三公、掃除が済んだら手前もここへ来や。早く片づけて、明るいうちに湯へ行くべえ」
後は浪花節《なにわぶし》を呻《うな》る声と、束藁《たわし》のゴシゴシ水のザブザブ。
二階には腎臓病の主《あるじ》が寝ているのである。窓の高い天井の低い割には、かなりに明るい六畳の一間で、申しわけのような床の間もあって、申しわけのような掛け物もかかって、お誂《あつら》えの蝋石《ろうせき》の玉がメリンスの蓐《しとね》に飾られてある。更紗《さらさ》の掻巻《かいまき》を撥《は》ねて、毛布をかけた敷布団の上に胡座《あぐら》を掻いたのは主の新造で、年は三十前後、キリリとした目鼻立ちの、どこかイナセには出来ていても、真青な色をして、少し腫《むく》みのある顔を悲しそうに蹙《しか》めながら、そっと腰の周囲《まわり》をさすっているところは男前も何もない、血気盛りであるだけかえってみじめが深い。
差し向って坐ったお光は、「私の留守に、どこか変りはなかったかね?」
「別に
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