来ねえのか?」
「来ねえようだよ」
「偽《うそ》つけ! 来ねえことがあるものか」
「じゃ、為さん見たのか?」
「俺は手前、毎日得意廻りに出ていねえんだもの、見やしねえけれど大抵当りはつかあ」
「そうかね」
「そうとも。きっと何だろう、店先へ買物にでも来たような風をして、親方の気のつかねえように、何かボソボソお上さんと内密話《ないしょばなし》をしちゃ、帰って行くんだろう。なあ、どうだ三公、当ったろう?」
小僧は怪訝《けげん》な顔をして、「俺《おいら》はそんなとこを見たことはねえよ。だって、あれからまだ一度も来たのは知らねえもの」
「本当か?」
「ああ、本当に!」
「そんなはずはねえがな」と若衆は小首を傾《かた》げたが、思い出したように盤台をゴシゴシ。
十分ばかりもゴシゴシやったと思うと、またもや、「三公」
「三公三公って一々呼ばなくても、三公はここにいるよ」
「お上さんのとこへ、この節郵便が来やしねえか?」
「郵便はしょっちゅう来るよ」
「なあに、しょっちゅう来るのでなしに、お上さんが親方へ見せずに独りで読むのが?」
「どうだか、俺《おいら》はそんなことは気をつけてねえから……や!
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