んを取り持とうと思うんだが……」
「女房を? そうさね……何だか異《おつ》りきに聞えるじゃねえか、早く一人押ッ付けなきゃ寝覚《ねざ》めが悪いとでも言うのかい?」
「おや、とんだ廻《まわ》り気《ぎ》さ。私はね、お前さんが親類付合いとお言いだったから、それからふと考えたんだが……お前さんだってどうせ貰わなきゃならないんだから、一人よさそうなのを世話して上げたら私たちが仲人というので、この後も何ぞにつけ相談|対手《あいて》にもなれようと思って、それで私はそう言って見たんだが……どうだね、私たちの仲人じゃ気に入らないかね?」
「なに、そんなことはねえ、新さんとお光さんの仲人なら俺にゃ過ぎてらあ。だが、仲人はいいが……」と言い半《さ》して、そのまま伏目になって黙ってしまう。
「仲人はいいが、どうしたのさ?」
 男は目を輝かせながら、「どうだろう? お光さん」
「え?」
「せめてお光さんの影法師ぐらいのがあるだろうか?」
「何だね、この人は! 私ゃ真面目で談《はな》してるんだよ」
「俺も真面目さ」
「まあ笑談は措《お》いて、きっとこれから金さんの気に入ろうというのを世話するから、私に一つお任せなね
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