北條より一ノ宮へ
大町桂月
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ぴり/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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一 人形茶屋
安房北條の海岸に、家を擧つて寓居すること凡そ一箇月。那古に遊び、船形に遊び、洲崎に遊び、鷹ノ島に遊び、沖ノ島に遊び、手ぐり網の船をさへ放ちて、菱花灣上、到る處に我が遊蹤を印しけるが、取りわけて一つ我眼にとまれるものあり。人形茶屋是れ也。
柏崎の海岸にありて、鷹ノ島と相對し、四阿の如きものに壁を付けたるが、屋根の上の中央に、木製の人形の面を置く。面の長さ二尺餘り、眞白に塗り、髮を丁字髷にす。聞く、これ主人自から作れるものなり。茶屋も亦主人自から工夫して建築せる所に係る。この主人、工匠を好み、細工道具を手にして居りさへすれば、終日厭くことを知らず。爲に商賣のさはりになるとて、細君に叱らるゝ
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