房州の一夏
大町桂月

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)勝山《かちやま》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「石+溏のつくり」、219−9]

 [#…]:返り点
 (例)流丹萬丈削[#二]芙蓉[#一]。

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すや/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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        一 沼村

面白かりしは、房州に於ける一夏。指を屈すれば、凡そ二た昔となりぬ。一行の盟主ともいふべき佐々木高美氏は、既に世に在らず。同行者の中、今は海軍將校となれるもあり、工學士となれるもあり、理學士となれるもあり、中學教員となれるもあり。當時はいづれも血氣盛りの青年なりき。
 館山の町つゞきなる沼村に、二階が一間、下が二間なる家を借り、飯だけは、家主にたいてもらひ、餘は一切、各自交代して之を辨じぬ。同じく寓するもの、少なき時は三四人となり、多き時は十人にも及べり。その多くなりたる時は、枕足らず。トラ
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