風船玉
大町桂月
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「纏」の「广」に代えて「厂」、126−6]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)やれ/\
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ぱつと日がさして、風なきまゝに、運動にとて、電車を閑却して、家路さして歩く。雨餘の泥濘殘れり。危くも轉ばむとして漸く支へたるが、その拍子に、右足に穿きたる足駄の前齒拔けたり。それを入れむとして見れば、やれ/\前齒の入るべき溝の底より前へかけて、足駄の臺が一面に横に割れたれば、最早溝の用をなさず。新に買ふだけの錢は持たず。已むを得ず、片足だけは、一本齒にて、のそ/\たどりゆく。
路に風船玉を賣るものあり。子供にとて、五つばかり買ふ。下女とおぼしき女、四五歳ばかりの男の子をおぶひ半※[#「纏」の「广」に代えて「厂」、126−6]に負ひたるが、一つ買ひて子供にもたすより早く、子供誤つて絲をはなして、風船玉ふは/\と空に浮き上る。あれよ/\と言へど、甲斐
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