又其の遺植の梅あり。思ふに將門の關東に於けるは、武田信玄の甲州に於けるが如きものありしならむか。而して一方には、信玄は不孝の子と嫌はれ、將門は叛逆の臣と憎まるゝ也。
 都に戻りて、約せし如く、四谷見附外の三河屋に入りて、牛肉を食ふ。東京第一流の牛肉店也。好文會の例會は、いつも此處に開く。裸男、肉を好まずして葱を好む。肉は半人前にて足り、葱と漬物とは二三人前にても足らず。而して好文會には、下戸多く、其の代りに健啖家多し。彼我相合して、始めて普通一人前の客也。[#地から1字上げ](大正五年)



底本:「桂月全集 第二卷 紀行一」興文社内桂月全集刊行會
   1922(大正11)年7月9日発行
入力:H.YAM
校正:門田裕志、小林繁雄
2008年11月28日作成
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