猫征伐
大町桂月

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鷄の親鳥、ひなどり、合せて、六十羽ばかり飼ひけるが、一匹の、のら猫來りて、ひよつこを奪ひ去ること、前後、十五六羽に及べり。是に於て、わが家に、一の波瀾起る。その猫を殺さむとは、血氣盛りの甥の意見也。猫も憎けれど、祟るもの也。どうぞ殺して呉れるなとは、母、姉、妻などの意見也。なほ露國が滿洲を占領せしを見ても、清國、韓國などが何等の手出しをも爲す能はざりしが如し。甥、余の意見を問ふ。余曰く、害を爲すものは殺しても可也。されど、女の連中が神經をなやますも、可愛想なれば、殺すことを女に知らすなと。
 一夜、甥、盥伏せを設けけるに、猫、果して術中に陷りたり。甥之を蚊帳につゝみて、遠方にもちゆきて、棄てて歸らむとす。母、以爲らく、或ひは途にて殺すことあらむとて、監督として、下女をして共にゆかしめたり。かくて棄てて歸りしが、翌朝、その猫は、直ぐに我庭にあらはれ來れり
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