親馬鹿の旅
大町桂月

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【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
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金さへ返せば、鬼も佛。重荷の一部がおりたかと思へば、我心も輕くなり、金なほ餘れるに、家に歸るより早く、さあ來い、何處へでも、伴れて行つてやらうと、次男と三男とをつれて、立ち出でたり。長男は、近く箱根へつれて行きしことあり、學校の都合もあり、殊に、この日、家にあらざりければ、つれざる也。
 さて、都を離れて、何處へゆけば子供は面白がるかと、いろ/\考へしが、江の島は、山もあり、海もあり、貝細工あり、鮑取りもあれば、子供をつれての旅は、これに越したる處はあらざるべしとて、江の島へと思ひ定めて、新橋より汽車に乘る。
 まだ次男が八歳、三男が六歳の時の頃也。風寒ければ、汽車の窓は開かず。玻璃越しに、山を眺め、海を眺め、田を眺め、茅屋を眺め、煙突を眺め、荷車を眺め、行人を
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