川魚料理
大町桂月

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)諒《よ》めたり

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「酉+它」、第4水準2−90−34]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)諒《よ》めたり/\
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        一 五圓と十圓

裸男著述の爲に、南郊に籠城して、世間と絶縁すること、幾んど半年に及べり。其の間、何人にも面會せざりき。やつと脱稿して家に歸れば、誰よりも先きに、訪ひ來れるは、夜光命と十口坊と也。つもる話を歩きながらとて、打連れて池袋驛にいたる。『さて何處にか行かむ。池上方面にせむか』、二人答へず。『二子方面にせむか』、二人答へず。『八王子方面にせむか』、二人答へず。『大宮方面にせむか』、二人答へず。『柴又方面にせむか』と云へば、二人手を拍つて喜ぶ。諒《よ》めたり/\、花よりも團子、風景よりも料理、前年、時も同じ今頃、この三人に榎木小僧加はりて、柴又の川甚の川魚料理に舌鼓打ちたり。その味、今
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