川越夜行記
大町桂月

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(例)ます/\
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裸男以爲へらく、『文明ます/\進みて、人はます/\柔弱になり行く。都會の少年、殊に然り。遠足も晝間では平凡也。夜間はちと苦しかるべし。そのちと苦しい目にあはせて、心身の鍛錬を圖るも、亦一の功徳ならずや』とて、檄を天下に飛ばして、有志の士を募り、北郊巣鴨驛に相會し、午後七時半を以て、程に上る。同勢すべて百四人也。夜光命も十口坊も、此頃は懷ろが少し温まると共に、身體も膨脹しだしたり。歩くにも、苦しさうなれば、遠慮して、わざと通知せざりしに、いつしか其れと知りて、來り會す。目ざすは埼玉縣の川越町、東京より十三里と稱す。薩摩芋の産地として有名なるが、『燒芋』とかけて何と解く。十三里と解く。心は栗(九里)より(四里)旨いとは、裸男少年の頃、大いに感服したる謎也。
 下板橋
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