小利根川の櫻
大町桂月

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【テキスト中に現れる記号について】

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「梟」の「木」に代えて「衣」、第3水準1−91−74]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)やにこ/\顏の
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        一 東京の櫻

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吉野山去年のしをりの路かへて
  まだ見ぬ方の花をたづねむ
[#ここで字下げ終わり]
心は花に浮き立つ陽春四月、路伴れもがなと思ふ矢先、『今日は』とにこ/\顏の夜光命。待つてましたと裸男もにこ/\。挨拶もそこ/\にして語り出づるやう、『やよ聞き給へ。花は櫻、櫻は日本、日本の中にても東京附近、げに/\花の都なる哉。さてその東京附近には、吉野櫻と稱するもの多きが、櫻の中の櫻とも云ふべき山櫻は、小金井の獨得なり。小平村小川水衞所より小金井村境橋まで一里半、櫻の數は千六百五十本、幾んどみな山櫻也。而も老木也。殊に玉川上水の清流を夾めり。そのまた境橋より下、和田堀水衞所まで約四里
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