より、父兄茲に反省して、女子の高等教育を避くるに由るなりと。果して然らば、將來は知らず、當分の内は、帝國女子大學の前途も大いにあやぶまるゝ也。在來、蹉躓に蹉躓を重ねし老事業家西氏の苦心もさこそと思はるゝ也。されど、進歩して止まざる世の中、必ずや我國に女子大學の三つ四つ出來るの日あるべし。目白臺の女子大學も小日向臺と近く東西相對峙し、相競爭すれば一種の壯觀たるを失はず。知らず、西氏が老後の思出でに、よく之を完成するを得るや否や。
 東洋協會專門學校も、この附近に在り。もとは、東洋を冠せずして臺灣を冠し、臺灣向きの人才を教育せしが、韓國滿洲が我が勢力範圍となるに及びて、改めて東洋を冠せり。私立なれど、官の保護金あり。外國語學校と商業學校とを合したるやうな學校なるが、この校の盛衰は、外に及ぼす我が勢力の消長を卜するに足るべし。
 斯かる二大校を有せる小日向臺は、南は江戸川に臨み、東は茗荷谷を隔てて小石川臺に對し、西は音羽谷を隔てて目白臺に對し、北は小石川臺と一つになりて大塚臺に連なる。四方いづれより行くも、坂路あり。從つて馬車の往來稀なる市中の別天地也。彈藥庫の側に立てる一株の銀杏樹、甚だ高
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