小金井の櫻
大町桂月
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「風にょう+昜」、第3水準1−94−7]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\
−−
聖武のみかど勅願せさせ給ひけむ、金光明、四天王、護國の國分寺すたれて、遺跡たゞ敗瓦を見る。歌舞の菩薩の戀ヶ窪、香骨、土と化し、烟華の地、野らとかはりて、傾城の松ばかりぞ、むかしながらの色なる。井ノ頭の池ひろく境幽なる處、貫井辨天の小高く眺め開けたる處、絶代の工事、野をつんざいて、清流珠を跳らすこと十數里、兩岸には、吉野の山の山櫻、移し植ゑられて、その幾千萬株なるを知らず。花はさくら、さくらは武藏の小金井と、上水の音に聞ゆる關左の名勝、水道の水の香ばしきを汲むにも、心は上流の花に飛ばずんばあらず。四月の半ば過ぎ、花の盛りにはおくれたれど、雜沓せざるを、その代りの取柄にとて、萩の舍先生と共にいでたつ。
境の停車場を出でて、北にゆくこと七八町にして上
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大町 桂月 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング