る。左甚五郎の作と稱する門を入れば、客殿宏壯にして、青苔地に滿つ。客殿の後ろに方丈あり。築山をひかへ老杉に圍まれて、瀟洒にして間寂、別天地中の別天地也。寺の執事楠純隆氏、文を善くす。余を遇すること厚し。われ方丈に起臥して日を經るまゝに、末の子の四郎の五歳になれるが、余を慕ひて、母と共に山に登り來たる。大正の石童丸は、母と共に父に逢へるなりと一笑す。
三 演説會
鹿野山小學校の校長鴇田鹿鳴に要せられて、校舍に演説す。その晩、共に大塚屋の樓上に飮む。われ一絶を作つて曰く、
[#天から2字下げ]天風一陣氣如[#レ]秋。人在[#二]峯頭百尺樓[#一]。笑把[#二]巨杯[#一]澆[#二]磊塊[#一]。酒香吹散十三州。
鹿鳴次韻して曰く、
[#天から2字下げ]占得人間以外秋。胸襟披盡醉[#二]高樓[#一]。風流今夜凌[#二]千古[#一]。笑見十三州又州。
鹿野山の東北麓なる小絲村の青年會より請はれて、往いて演説す。戯れに俗謠を作つて曰く、
[#ここから2字下げ]
小絲言はれて斷られうか
儂の思ひも鹿野山
[#ここで字下げ終わり]
鎌田善一郎、松崎長治の二氏來り請ひ、當日
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