伯勞鳴くや石の地藏の首が無き
[#ここで字下げ終わり]
 よかれ、あしかれ、ともかくも、出來上りたり。我が生みたる子が醜ければとて、憎む人はあらじ。醜ければ、なほ更、不便に思ふべし。されど、物事には、程度あり。親は、概して子の愛に溺れて、所謂親馬鹿ちやんりんとなるが如く、藝術家でも概して親馬鹿的なるこそ、傍痛きことなれ。
 國府臺の國府臺とも云ふべき處は、兵營に占領せられたり。こゝは、小利根川と離れむとする臺の一端、四年前に開かれて、公園となりたる也。西方三四里の外に、東京市あれど、目立つは、たゞ凌雲閣と幾百の煙突が吐く烟と也。斜日、陰雲の中に入りたるが、雲をそむるほどには沈まず。遠き處は、早や暮煙低く横はる。一つに連なりし遠林、烟に分れて幾段にも見ゆ。小利根川、近く前を流る。冬の事とて、水落ち、洲出づ。見る/\、川が忽ちばつと明かになりぬ。斜陽が水を射る角度の具合にて、斯く明かになる也。赤に非ず、黄に非ず、白にあらず、唯※[#二の字点、1−2−22]明かといふより外なし。山紫水明とは、平生唯※[#二の字点、1−2−22]文字上に知りて、晩方になれば、水があかるくなるならむ位に思ひ
前へ 次へ
全12ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大町 桂月 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング