牛經
大町桂月
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「冫+虫」、37−13]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)さて/\
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牛も鳴き狐も鳴きて別れ哉
[#ここで字下げ終わり]
古原第一の名妓と謳はれたる花扇、千思萬考すれども、解する能はず。終に閉口して、なじみの龜田鵬齋を呼び寄せて、之を問ふ。鵬齋打笑ひて、そなたは振つたるよな、人もあらうに、蜀山人を振るとは、さて/\殘念なることをしたるものかなといふ。振つたりと聞きて驚き、蜀山人と聞きて、猶更驚き、膝を進め、腰を搖がして、その故を問へば、牛は何と鳴くぞ、もう/\、狐は何と鳴くぞ、こん/\。初會に振られたる故に、もうこん/\とて、裏を返さざるなりと言はれて、うれしや、句の意は分りたり。蓬頭粗服、風采あがらざる一老書生なりしに、それを蜀山人とは、如何にして知り給ふぞと問へば、凡そ天下ひろしといへども、今の世、蜀山人なら
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