ら詳細な事件の顛末を報告された。けれども話が亜太郎の描き残した疑問の絵のところまで来ると、何故《なぜ》か白亭はハッとして見る見る顔色を変えると、眉根に皺を寄せて妙に苦り切ってしまった。

          三

 司法主任は流石《さすが》に白亭の微妙な変化を見逃さなかった。
 事件の報告は急転して、猛烈な、陰険な追求が始まった。が、白亭も流石に人物だ。あれこれと取り繕《つく》ろって、執拗な主任の追求を飜《ひるがえ》すようにしていたが、けれども、とうとう力尽きて、語り出した。
「……どうかこのことは、死んだ者にとっても、生きている者にとっても、大変不名誉なことですから、是非とも此処だけの話にして置いて下さい。……川口と金剛とは、二人とも十年程前から私が世話をしていますので、私共と二人の家庭とは、大変親しくしていましたが、……これは最近、私の家内が、知ったのですが……川口の細君の不二さんと、金剛とは、どうも……どうも、ま、手ッ取早く云えば、面白くない関係にある、らしいんです。で大変私共も気を揉《も》んだのですが、当の川口は、あの通りの非常な勉強家でして、仕事にばかり没頭していて、サッパリ
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