星はつきましたよ」
「もう判ったんですか? 誰です、いったい、犯人は?」
「いや、誰れ彼《か》れと云うよりも、まだその、問題の自動車《くるま》はみつからないんですか?」
 すると大月氏は、いらいらと手を振りながら、
「いや、それですがね。どうもこれは、谷底へでも墜落したとより他にとりようがないんです」
「私もそう思いますよ。探しましょう」
「いや、その探すのが問題なんですよ。私もいま、こちらへ来ながら道の片側だけは見て来ましたが……この闇夜で、しかも……この有料道路《みち》の長さが六|哩《マイル》近くもあるんですから、それに沿った谷の長さもなかなかあるんですよ。おまけに路面が乾燥していて、車の跡もなにもありゃアしないんだから、大体の墜落位置の見当もつきませんよ」
「しかし愚図愚図してるわけにもいきませんよ」
「そうですね。じゃア、とにかく残った片側を探して見ましょう。……だが、いったい犯人は誰なんです?」
「犯人?……堀見氏の令嬢ですよ」
 云い捨てるように警部補は自動車《くるま》に乗り込んだ。そのあとから、唖然《あぜん》たる一行が乗込む。自動車はバックして、箱根口へ向って走り出した。
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