は?」
「あの方はもう、六十をとっくにお越しです」
「富子さんは?」
「お嬢様は、今年十七でいらっしゃいます」
「有難う」夏山警部補は満足そうにニヤリと笑うと、「ではもう一つ、他でもないが、堀見家の人々は、皆んなこの別荘の合鍵を持っているね?」
「はい」
「むろんお嬢さんも?」
「はア、多分……」
「有難う」とそれから傍らの部下を振返って、元気よく云った。「さア、もうこれでここはいいよ。裁判所の連中が来るまでは、警察医《せんせい》に残っていて貰うことにして、これから直ぐに有料道路《ペイ・ロード》へ出掛けるんだ」

          六

 夏山警部補が有料道路《ペイ・ロード》の十国峠口へ着いた時には、もう大月氏は、先に廻された警察自動車で箱根口から引返して、そこの停車場《スタンド》で一行を待ちうけていた。
 両方の停車場《スタンド》には、先着の警官達が二手に分れて監視していた。大月氏は、警部補を見ると直ぐに口を切った。
「もう別荘のほうは、済みましたか?」
「済むも済まぬもないですよ。なんしろ犯人は此処へ逃げ込んだって云うんですから、大急ぎでやって来たわけです……が、まア、だいたい目
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