ん+責」、第3水準1−91−87]《ひだ》へぼやけたスポット・ライトを二つダブらせながらサッと当って、土台の悪い幻燈みたいにグラグラと揺れながら目まぐるしく流れる。と、その襞※[#「ころもへん+責」、第3水準1−91−87]《ひだ》の中腹にこの道路《みち》の延長があるのか、一台の華奢なクリーム色の二人乗自動車《クーペ》が、一足先を矢のようにつッ走って、見る見る急角度に暗《やみ》の中へ折曲ってしまった。
「チェッ!」運転手が舌打ちした。
退屈が自動車《くるま》の中から飛び去った。速度計は最高の数字を表わし、放熱器《ラジエーター》からは、小さな雲のような湯気がスッスッと洩れては千切れ飛んだ。車全体がブーンと張り切った激しい震動の中で、客席の紳士が眼を醒《さま》した。
「有料道路《ペイ・ロード》はまだかね?」
「もう直《じき》です」
運転手は振向きもしないで答えた。とその瞬間、またしても向うの山の襞※[#「ころもへん+責」、第3水準1−91−87]《ひだ》へ、疾走するクーペの姿がチラッと写った。
「おやッ」と紳士が乗り出した。「あんなところにも走ってるね? ひどくハイカラな奴が……いった
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